ビットサミット – 『ポケモン』を開発したゲームフリークの「もう1つの顔」とGIGA WRECKER | ステージ講演内容紹介まとめ

ビットサミット(BitSummit) 2017のステージ上で講演された「ゲームフリーク」の講演内容を紹介します。

講演内容紹介

ゲームフリーク「もう1つの顔」

今回のビットサミットでは、『TEMBO THEBADASS ELEPHANT』と『GIGA WRECKER』を出展しているゲームフリーク。
これらの作品の開発を手掛けたスタッフである、ディレクターの尾上氏、プランナーの伊藤氏、デザイナーの小川氏がステージに登壇した。
かの『ポケモン』シリーズを開発したゲームフリークの、「もう1つの顔」とはいったいどのようなものなのか。
GIGA WRECKER』を通じて、開発者たちの想いを語っていただいた。

『GIGA WRECKER』について

ステージ前半では主に、出展作品である『GIGA WRECKER』についての話題となった。
ブースの様子と、開発者インタビューについてはこちらを見てほしい。

なぜ「ガレキ」なのか
自社開発したオリジナルタイトル『GIGA WRECKER』を知ってほしいという思いで出展したというゲームフリーク。
最大の特徴ともいえる「主人公がガレキを操る」という発想に至った経緯を話してくれた。

当初はガレキではなく、磁力を操るというアイデアだったとのこと。
しかし「鉄」に影響を及ぼす磁力は、背景の鉄柱などに作用しないと不自然であり、ユーザーが混乱して集中できない。

世界観に集中してもらうために、ユーザーに「なぜ動いているのか」を意識させない。
このようなユーザーの「なぜ?」を解消する点に苦労したと語った。

システムのコンセプトありきで開発
『GIGA WRECKER』は「ガレキを操る」という世界観のため、そこに物理演算を組み込むというシステム面でのコンセプトから逆算して作られた。
「ガレキを操る」なら、「ガレキは散らばっていった方が良い」、だったら「倒した敵がバラバラに散らばった方が良い」、「ヒビが入った柱などを用意して、壊れることをわかりやすくした方が良い」といった具合だ。
もっとも、ゲームデザインを担当した伊藤氏の趣味によるものも大きいようで、SFのエッセンスなどはここから取り入れられているとのこと。

キャラクターデザインは「あさぎり」氏
『GIGA WRECKER』のキャラクターデザインは、「Pixiv」などで活躍している「あさぎり」氏が担当している。
コンセプトが決まっていく中で、あさぎり氏の描くイラストがイメージにぴったりハマり、キャラクターデザインをお願いしたそうだ。
「伝手があったわけではなく、ネット上で連絡を取り合った」と語るのはディレクターの尾上氏。
「あさぎり」氏は開発初期から参加しており、ともに世界観が作り上げられていった。

ユーザーがステージを作成できる
パズルギミック満載のステージや、ハードなアクションゲームとなるボス戦など、かなりやりごたえのある『GIGA WRECKER』。
しかし当初は7時間くらいのプレイボリュームを想定して制作されていたと明かされた。
実際は数十時間プレイしているユーザーも多く、特にユーザーがステージを作成できる「レベルエディタ」にハマってしまうユーザーも少なくない。

「レベルエディタ」には開発に使用されたものと、ほぼ同様のツールが使用されており、これを一般ユーザーに向けて調整するという部分でも苦労したそうだ。
作成したステージは「Steam」にアップロードすることも可能で、伊藤氏は「ユーザーが作ったステージを見るのは楽しい」と話してくれた。

『GIGA WRECKER』に込められたこだわり
話題は移り、「開発する際にこだわったこと」について開発陣が語る。
「どうやったら気持ちよく壊せるかということと、どうやったらパズルを成立させられるかについて工夫した。」と語る尾上氏に続き、「物理エンジン特有のカオスな動きはおもしろい。さまざまな解き方ができる懐の広さはいい感じ。」と伊藤氏。
「ゴリ押しもそれはそれで自由度の1つであり、解き方をユーザー同士でシェアしてくれると嬉しい。」と語る背景に、『ポケットモンスター』から続く「ユーザー同士でコミュニケーションできるゲーム作り」という開発者の想いを感じられる気がする。

なぜ「Steam」なのか
なぜ『GIGA WRECKER』はSteam配信になったのか。
この質問に対し尾上氏は、「すでに『TEMBO』でSteamを経験したから。もう1つは挑戦的なゲームの多いインディの市場で、自分たちも挑戦したかったから」と応えた。
『GIGA WRECKER』でデザイナーを担当した小川氏は、「Steamはフォーラムやコミュニティが充実していて、ユーザーとの距離が近い。良くも悪くも反応がすぐに帰ってくる。」とコメント。
なんと、ユーザーから直接クラッシュログが送られてきたこともあったそうだ。

また、「Steamの機能である”アーリーアクセス”を使い、ユーザーの意見を伺って仕様を変えた部分もある。」と伊藤氏が裏話を明かしてくれた。
続く尾上氏が「Steamは開発者にとって便利な機能が盛り込まれている。日本語のドキュメントも増えてきているので、チャレンジしてみては。」と開発者たちに呼びかけた。

「新しいゲームを生み出す」ゲームフリークの挑戦

コンシューマのイメージが強いゲームフリークだが、そもそもどのような背景があって『GIGA WRECKER』などのインディペンデントなゲームが作られているのだろう。
ゲームフリーク内に存在する「ギアプロジェクト制度」について、小川氏が紹介してくれた。

要約すると、社員自らがゲームの企画を提出し、社内審査を通過するとゲームをリリースできるというもの。
特徴的なのは、「ゲームのジャンルはもちろん、用いる技術やハードに制限はない」という点。
ビデオゲームである必要すらなく、ゲームであれば何でも良い。
ボードゲームでもカードゲームでも、おもしろければアリなのだ。

ゲームフリークという会社自体が、新しいゲームを生み出すことに注力している。
自分が好きなものや、「おもしろい」と思うことを、自分たちの力で世に生み出すという姿勢はまさにインディスピリットと言えるだろう。
「今後もギアプロジェクト制度に参加したいですか?」という最後の質問に対し、ガッツポーズで応えた3人の姿が印象深い。
さすがの「ゲームフリークス」だ。

登壇者紹介

尾上 将之_ゲームフリーク
尾上 将之
ゲームフリーク ディレクター。
『ポケットモンスター』シリーズではプログラマーとして開発に関わる。
初のディレクター担当作品となる『GIGA WRECKER』は大きな話題を呼ぶとともに、好評を集めている。
好きなポケモンはシードラ。

伊藤博人_ゲームフリーク
伊藤 博人
ゲームフリーク プランナー。
尾上氏と同様に、『ポケットモンスター』シリーズや『TEMBO THEBADASS ELEPHANT』の開発に関わっている。
GIGA WRECKER』ではゲームデザインやコンセプトの決定などを担当。
好きなポケモンはアーマルド。

小川一美_ゲームフリーク
小川 一美
ゲームフリーク デザイナー。
2016年に同社入社後、『GIGA WRECKER』でプロジェクト初参加。
エフェクトの作成や、演出などを担当した。
好きなポケモンは、マメパトなど鳥ポケモン全般。

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