ビットサミット – ディレクターの役割とプロデューサーの必要性 | 稲葉 敦志(プラチナゲームズ)の ステージ講演内容紹介まとめ

ビットサミット(BitSummit) 2017のステージ上で講演された「稲葉 敦志(プラチナゲームズ)」の講演内容を紹介します。

講演内容紹介

なぜプロデューサーが必要なのか

前回・前々回のビットサミットではインディ業界における自身の役割や、「プロデューサー」という仕事、開発会社独自の技術やノウハウといった「形のないIP」の共有について語った稲葉氏。
「ユーザーに喜んでもらうために、デベロッパー同士が構築するネットワークが重要」と考える稲葉氏だが、本年のステージでは「プロデューサーはディレクターのために存在する」と切り出し、ディレクターの役割とプロデューサーの必要性について語った。

プロデューサーはディレクターのために存在する

なぜ、インディの祭典でこのような話をするのか。
インディシーンにおけるディレクターは、コンシューマゲーム開発におけるそれとは違うところがあると語る稲葉氏。
席の奪い合いとなるAAAタイトルのディレクターは、他者と競争し、場合によっては蹴落とさなければならない。
しかし、インディシーンにおいては、自分自身でディレクターの椅子を生み出すことができる。

どちらが良い、悪いではなく、インディシーン特有の大きな魅力として、ディレクターの相違性を捉えているということだろう。
だからこそインディに注目し、今後も見守っていきたいと話す稲葉氏は、続けて「ぶっちゃけ話」を披露してくれた。

ディレクターの人間像

新しいディレクターは次々と生まれ続けている。
稲葉氏はディレクターにはさまざまなタイプがあると、「プラチナゲームズ」のスタッフを例に紹介してくれた。
『ベヨネッタ2』のディレクターである神谷英樹氏は「キ〇ガイ型」。 ※稲葉氏のコメントまま
同じく『ベヨネッタ2』のディレクター、橋本祐介氏はナイーブな「天才型」。
『NieR:Automata(ニーアオートマタ)』のリードゲームデザイナーを担当した田浦貴久については、今後ディレクターになってほしいとした上で、黒しくておもしろい面のある「悪人型」と紹介した。

なぜこのような分類をするのか。
新しいゲームが立ち上がる時に、「どんなアイデアなのか」というのはもちろん大事なこと。
加えて稲葉氏は「どんな人間が作るのか」も重要視しているそうだ。
ディレクターがそれぞれの特色を活かした企画立案をできるように、あるいはその企画をブラッシュアップするために。
そして、最終的なゲームの完成形を正確にイメージするために、製作者の人間像を大さっぱに分類することが必要なのである。

プロデューサーの役割

企画をともに育て、パブリッシャーに持っていく。
ディレクターと二人三脚であることが、プロデューサーの役割であると稲葉氏は考えている。

先述の通り、インディシーンにおいてディレクターの席は自ら生み出すことができる。
そのなかで、ともに種を育てること、あるいは、種がどのように育つかを見守ること。
プロデューサーの存在はインディシーンにとっても重要だ。

むしろ多くの人に触れてもらう方法、認知してもらう方法がまだ発達しきっていないインディペンデンスゲームにおいてこそ、プロデューサーは大きなウエイトを占めるのかもしれない。
ビットサミットに出展しているデベロッパーの方にお話を伺った際も、パブリッシャーを探すという点で苦労しているという悩みは何度か耳にした。

ディレクターとコミュニケーションを深め、作品への想いをぶつけ合うことが、プロジェクトにおいて大切な時間であると話す稲葉氏。
とりとめもない話から真面目な話まで、さまざまな会話の中でお互いへの理解が深まり、作品はより洗練された形で完成されていくのだろう。

しかし稲葉氏は、「広がり続けるインディーシーンにおいて、このようなサポートをしてくれるプロデューサーがどのくらいいるのだろうか」「そこが興味深いし、心配。」とも語っている。

プロデュースも「形のないIP」

稲葉氏は前回の講演で語った「形のないIP」に、プロデュースも含まれると考えている。
インディーシーンに対して、どれだけ熱心に企画を育て上げていけるか。
「いろんな作品をみたり、インディーシーンの人たちと交流して、自分が力になれるなら、積極的に活動していきたい。」
「ビットサミットの出展者だけでなく、一般来場者のなかで将来ゲームを作りたいという方がいれば、そのピュアな気持ちを形にするお手伝いができたらいい。」
「ビットサミットやインディシーンの楽しさに飛び込むだけでなく、その楽しさをもっと広がる側に回りたい」
と想いを口にした。

「新しいディレクターを育てる活動を止めたくはない。それが今回の一番のテーマ。」
ユーザーに楽しんでもらうため、ゲーム業界の発展に尽力するという稲葉氏の理念は、前回の登壇時からなにも変わっていない。
自ら積極的に「形のないIP」を提供し続ける稲葉氏だからこそ、インディシーンも含めたゲーム業界の中心で活躍し続けるだろう。

消費されていく「ゲーム」というコンテンツに新たな価値を生み出し続けるため、「形のないIPの共有」にどのように関わっていけるか。
ゲームを取り扱うメディアとして大いに考えさせられる部分であり、今後我々が追及したいものでもある。

登壇者紹介

稲葉淳志_プラチナゲームズ
稲葉敦志
プラチナゲームズ株式会社 取締役開発本部長/エグゼクティブプロデューサー。
カプコン在籍時にプロデュースした「逆転裁判」や「ビューティフルジョー」は大きな話題を呼んだ。
その後、クローバースタジオ代表取締役を経て、プラチナゲームズを立ち上げる。
クローバースタジオで製作した「大神」は今なお語り継がれる人気作となり、現在に至るまで『Vanquish』『ベヨネッタ2』など多数のヒット作を生み出している。

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