ビットサミット2017-小山順一朗&田宮幸春(バンダイナムコエンターテインメント)講演「アニメIPのVRを創る時に考えるコト」|ステージ講演内容紹介まとめ

ビットサミット(BitSummit) 2017にて小山順一朗氏と田宮幸春氏(バンダイナムコ)の講演内容を紹介します。

講演内容紹介

第5回ビットサミットの1日目、バンダイナムコエンターテインメント株式会社の「小山順一朗」氏と「田宮幸春」氏が登壇しました。
講演内容を小山氏と田宮氏の対談形式でお伝えします。

初めに

小山(敬称略)
今日は施設向けのVRの話をします。どんなVRがいいかなって話は最終的に、PCや家庭用ゲーム機の参考にもなると思います。
我々は「VR ZONE project i can」という去年の4月から10月までやっておりました。
新宿で夏ぐらいから予定しているいくつかある企画の1つとして、『エヴァンゲリオンVR The 魂の座』を発表しました。
エヴァなのでちゃんと初号機、零号機、二号機で発進するんですけども、今回はレイとか、シンジとか、アスカとかはいないですよ。
一般の人が動かしたらどうなるかという実験的な考えで作ってます。

田宮(敬称略)
我々がやっている「Project i Can」って何者かというと、本能に訴えかける最高の実在感を伴うVRエンタメを追求するプロジェクトです。
今日は体感筐体を作るだけでなく、体験デザインが大事って話をしたいんですね。
体感マシンに頼らずに実在感を上げる体感デザインのお話をするので、VRの家庭用のコンテンツを考えている方も何かしら参考になると思います。

考え方の順番が逆

小山
まず最初に感動するにはどうすればいいんだろうか、から入りました。
考え方の順番が逆なんですね。
僕たちがやっているのは実在するスキーとか、実在する高い所にあるものとか、体験したことはないかもしれないけど、そういう感覚を分かってますよね。
VRゴーグルをかけて、そういう感覚にどう近づけていくんだ、どうしたらそういう風になるかなっていう考えでできてるんですよ。

田宮
前回の企画ではある意味都合よく設定をこっちで作れたんですね。
なぜかビルの外向きに板が出ているとか、なぜかそこに猫がいるとか、普通だとあり得ないんですけど。
そんな世界が簡単に作れちゃったのが、今回は逆ですよね。

小山
先に第3新東京市とかエヴァとかがあるってことですよね。

田宮
そのいった状況で、じゃあ驚いてもらうためにはどうしたらいいんだろうとか、切り出すポイントを一生懸命探さないといけないんですね。
ここが実は重要な考え方なんです。制約がしっかりあって、だから僕ら非常に頭をひねる結果になったんですね。

現実への超解釈

田宮
次はこんな所が難しいという話で現実への超解釈についてです。
アニメとかマンガは感情をどうやってコントロールするかっていう方に主眼が置かれてるんで、見せたいを優先して描かれてるんですね。
いろんなことが都合よく描かれているというものをVRにする時、現実世界で成立させなきゃいけないという難しさがあります。

小山
エヴァはどういう風に操縦しているんだろう、ということをある監督ともお話ししたんですけど、本人も都合よくやってらっしゃる。
神経を接続して、自分がエヴァンゲリオンになっている可能性もあるし、かといってシンジはガチャガチャやってるし。どっちなんだっていうね。

田宮
エヴァは特に自分がエヴァそのものになっちゃうのか、やっぱりパイロットみたいなのか所の議論をしっかりやりました。
それからドラえもんのどこでもドアを、むこうの世界に行った後、裏からのぞいた時どうなるかって話もありましたね。
これに関しては映画で1シーンだけ、具体的な表現があったので、スムーズにいきました。

寸法が決まってないことも多いんです。エヴァの身長とか。
どこでもドアの寸法も決まってませんでした。
こういう感じで決めなきゃいけないことがすごいたくさんあるんです。
解釈して理屈付けるのも苦労するし、解釈したものを原作の場に持って行って、納得してもらうのも苦労するんです。
結局これを突破すると、こうなってたのかーっていうお客さんの感動とリアクションがしっかり返ってくるので、ここは特にVR、IPモノをやるときのガンバリどころだなっていう感じがしております。

その企画、芯食ってる?

田宮
じゃあ次の話にいっちゃいますね、次は「その企画、芯食ってる?」ていう話ですね。
最初にその世界観でお客さんが何やりたいんだってことをストレートに、真剣に考えることがとっても大事なんです。
VRって奇をてらった意見を提案しがちですけど、王道から逃げちゃいけないんですね。
VRっていうのは実体験できる事自体が今までないことだったので、必ず今までにない状態になります。
ここどうなるんだっていうのを追求してほしいです。

小山
80メートルのエヴァンゲリオンを、自分がコントロールするっていうことについて真剣に話し合うんですね。
この材質や構造はどうなってるんだろうとか、この肩から先っておそらく、コックピットから見たらクレーンの先みたいに見えなければその恐怖は感じないんじゃないかとか。
実際その高さに登ってみるんですよね。

田宮
多分レバー1個倒すのも怖いと思うんですよね。そんな感じを出せないかとかを一生懸命考えるのが大事かなと思います。

ヒーローにしてあげない

田宮
次はヒーローにしてあげないということ。
実際自分で作ってみると「あれっ?」てなるんですね。
ヒーローのように実際に振るまえない自分にがっかりしたりとか、与えられた能力が荒唐無稽すぎて実感がわかないとか、実在感が崩壊しちゃうんですよ。
なので我々はこういうことをやりました。「一般人として憧れの世界に参加する」。
世界は夢見たとおりです、エヴァもそのとおりです、ただそこにいるのは紛れもない自分。
ヒーローみたいに戦えなくっても、負けちゃってもしょうがないよね、シンジ君じゃないし、っていうところも含めて本当に体験したらどうなるかってことがVRだと思ってます。

最後に

田宮
今日の話をまとめると、多くの人がまずやりたいと思う王道体験を想像力豊かに現実解釈する。これによって期待を超えるというギャップをつくるんですね。ギャップを作らなきゃいけないんです。
熱くなってるに違いないってなったら、ちゃんと鉄が赤くやけてるだろうとか、リアルに起こったらどうなるっていうのを超解釈します。
そうすると何が起こるかっていうとお客さんが「夢がかなった!」と同時に「こうだったのか!」ってなります。
こうだったのかが生まれるVRがとっても大事で、我々は最近こう言ってます「期待通り!予想以上!」。
そこを目指して我々は色々なものを作ってます。
こんなネタが新宿にまだたんまりありますんで、期待して頂ければと思います。

※IP、IPモノとは知的財産権のことで、マンガやアニメなど他社ライセンスを使ったコンテンツのこと。

登壇後インタビュー

tamiya
田宮幸春
東京大学工学系研究科にてロボット工学を研究し、1998年にナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)入社。
新規企画のコンセプト立案に参画することが多く、2015年からはVR技術でエンターテインメントの未体験領域を開拓するプロジェクト「Project i Can」にて各VRアクティビティのディレクションを担当。
「タミヤ室長」として活躍中。
代表作は『ドラゴンクロニクルシリーズ』や『ドラゴンボール ZENKAIシリーズ』など
koyama
小山順一朗
日本大学理工学部精密機械工学科卒業後、1990年に株式会社ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)入社。
その後、メカエンジニアとして体感ゲームに携わり、1992年には海外のVR業務用ゲーム機「VIRTUALITY」を日本向けに展開。
2015年からはVR技術でエンターテインメントの未体験領域を開拓するプロジェクト「Project i Can」を担当し「コヤ所長」として活躍中。
代表作は『アイドルマスター』『機動戦士ガンダム 戦場の絆』など。

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