ビットサミット2017 – 安藤 武博氏&四井 浩一氏が語る「いかにして通好みのゲームが生まれたか」|『鈴木爆発』ステージ講演内容まとめ

ビットサミット(BitSummit) 2017にて講演された安藤武博一さんと(株式会社シシララ)四井浩一さんの講演内容を紹介します。『鈴木爆発』をはじめ、両人が手掛けたゲームについて語られました。「通好み」と言われるゲームはどのように生まれたのか、明かされました。

講演内容紹介

安藤武博&四井浩一
株式会社シシララの安藤武博一さんと、『ストライダー飛龍』で知られる四井浩一さんが、これまでに作ってきたゲームについて語った。
両名は2000年に『鈴木爆発』という独特なゲームを作っていて、しばしばこのゲームは「通好み」だと言われる。『鈴木爆発』はどういった経緯で開発されたのか、通好みなタイトルがどうやって作らるのかが、講演のテーマとなった。


怪作『鈴木爆発』

鈴木爆発
安藤さんと四井さんが作った『鈴木爆発』は、いわゆる「バカゲー」と分類され、通好みと言われるゲームだ。両名は、どのような経緯でこのゲームが作られたかを語った。

初代『PlayStation』のころは、大手も特に売れることを考えずに自由にゲーム作りができて、ちょうど今のビットサミットの雰囲気に似ていたそうだ。
当時は、ゲームがポップカルチャーにならないかな、音楽とか映画みたいにみんなに楽しんでもらえないかなと、裾野を広げようと積極的に動いていた時代だったらしい。
そのころ、『パラッパラッパー』や『俺の料理』といったユニークなゲームが100万本売れていた。
そこで安藤さんは、ポップなアプローチで、キャラクターをコンピュータグラフィックではなく実写の女の子にすることで裾野が広がるんじゃないかなと思い、本気で100万本売る気で『鈴木爆発』を制作したそうだ。
『鈴木爆発』は、主人公の「鈴木さん」がことあるごとに爆弾と遭遇してしまい、爆発させないように爆弾を解体するというゲームだ。実写の写真のスライドショーによりストーリーが進行するパートと、3DCGで表現される爆弾解体パートに分かれている。
「今振り返っても独特なシステム。この辺が通好みと言われる所以なのかも。けど、今考えるとこのゲーム絶対100万本売れない。大人になって気づきました。絶対売れない。間違いない(笑)」と両名はは語る。
最終的にできあがったものは、全然予測もしなかった通好みになってしまったのだ。
つまり作っている側は、決して通好みを狙って作っているわけではなく、ユーザーの皆さんに楽しんでもらおうと思って作っていた。
RPGが流行っていたその当時、安藤さんはエニックス(現スクウェア・エニックス)の偉い人に、同じものを作るなとずっと言われてたそうだ。アプローチとしては、新しいものを作っていこうというムードが社内にあった。その結果、いろんなチャレンジがあって、『せがれいじり』『アストロノーカ』『バストアムーブ』など、エニックスのゲームの多くが通好みになってしまったということだ。


没になったゲームたち

マッドスティック
新しいチャレンジには失敗がつきもので、実は2人でもう1本作っていた『MAD STIX』という、最終的に開発が中止になった作品について語られた。
「ハンドルとアクセルとブレーキで操作しないレースゲームを作ったらどうなるか」と考えて作っていたそうだ。これを実現すると、運転からの視点やラジコン視点と呼ばれるものに縛られず、カメラがフリーになるのだ。
映画のようにカメラが自由に置けるので、自分でカメラマンになってカースタントを撮っていくみたいなゲームを考え、右のスティックを回せば回すほどやばいシチュエーションに、左スティックをを回せば回すほど安全な方に行くというシステムだったらしい。どこまでギリギリ回せるか、というチキンレースみたいなことをしながら遊ぶゲームになる予定で、自動車を使ったゲームに革命を起こそうと一生懸命作ったのだという。
「できあがったらこれも通好みになっていたかも」と語っていたが、当記事ライターとしては、正直ものすごくやってみたいものだ。

そういう開発途中に頓挫した企画は2人とも結構あるらしく、四井さんも没になったゲームを語った。
女の子が夏の暑い時期にホットパンツとタンクトップで汗だくになりながら蚊を叩くというアクションゲームを、試作まではしたそうだ。
「蚊を叩くことを楽しむんですが、どっちかと言うと大人の男性は、汗だくになっている女性のほうを楽しむのではないでしょうか。セクシーな女性がプルンプルンさせながら蚊を叩くとかいいんじゃないですか」とのこと。
今の時代なら、そういったゲームが実際にありそうな気がしてならない。


通好みになる理由は「ボタンの掛け違え」

安藤さんが言うには「結論から言うと、本当に一人でも多くの人に受けたいなっていう気持ち、ヒットしたいし売れたいし、たくさんダウンロードしてたくさん買ってほしいってう気持ちが、どこかボタンを掛け違えてしまったということだ。
安藤さんは、このことを飛行機に例えて語った。
「ライト兄弟の作った最初のライトフライヤー号って、何百メートルくらいしか飛ばなかったと思うんですけど、ライト兄弟の頭の中では大西洋を越えて太平洋を越えて地球一周してやろうという気持ちがあったと思うんです。結果的には飛ばなかったってこともあるし、狙いは大きいけど実際の着地はそれぞれ結構分かれることがあって、そういうのが通好みになるんじゃないかなと」


次は通好みにならないように

安藤さんも失敗ばかりというわけではなく、新しいチャレンジがうまくいったこともある。
まだ誰も『iPhone』でゲームをしていない時期に『ケイオスリングス』というロールプレイングゲームを作り、そしてついに100万ダウンロードを達成した。新しいワクワクを諦ずにいれば、いつかうまいことできるのだと安藤さんは語った。

最後に安藤さんと四井さんは、「没になったゲームとかをインディーで作ってビットサミットにまた参加したい。次は通好みにならないように、みんなにたくさんDLしてもらえるようなゲームを作っていきたいな」と講演を締めくくった。

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